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バンドマンガを読んでいると、紙のはずなのに音が鳴っているように感じる瞬間があります。スタジオの空気、ライブ前の張りつめた沈黙、音が噛み合った一瞬の高揚。そのすべてがコマの間から立ち上がってくる。実は、バンドという題材は、音楽以上に「人間関係」を描くのに向いているジャンルでもあります。
特に心に残るのは、うまくいかない時間の描写です。衝突、迷い、焦り。それでも音を鳴らす理由を手放さない姿に、胸を掴まれている。この記事では、漫画好きライターの大本コマの視点で、「バンド」をテーマにしたおすすめのマンガをまとめています。
- 音楽やバンドが好きな方
- 青春や葛藤が描かれた物語に弱い方
- 仲間との関係性が丁寧に描かれるマンガを読みたい方
感情が音になる「バンド」がテーマになったマンガ
本記事では、バンドをテーマにしたマンガの中から、大本コマが読後に強く余韻を感じた作品を紹介しています。成功や挫折といった結果だけでなく、音を鳴らすまでの過程や、メンバー同士の温度差まで描かれている作品を中心に選んでいます。読んでいるうちに、ライブハウスの匂いまで思い出されてくるような感覚が残ります。
実は、バンドマンガはジャンルの幅がとても広い。王道の青春ものもあれば、プロの世界の厳しさを描く作品、趣味として音楽と向き合う姿を描いた作品もある。同じ「バンド」でも、切り取り方によって物語の表情は大きく変わっています。
「音楽は好きだけど、バンドの内側はよく知らない」そんな読者ほど、このジャンルに引き込まれている印象があります。言葉にできない感情を、音に託す姿がまっすぐ伝わってくるからです。
ここから先では、読み終えたあとに音楽を聴きたくなるおすすめのマンガが続いていきます。イヤホンを手に取りたくなる準備は、もう整っているかもしれません。
BECK
著者:ハロルド作石 / 全34巻(完結)
あらすじ
平凡な中学生だった田中幸雄(通称・コユキ)は、天才ギタリスト・南竜介と出会い、音楽の世界に足を踏み入れます。類まれな歌声を持つコユキを中心に、バンド「BECK(M.C.E)」が結成。地道なライブ活動から、海外ツアー、そして伝説のフェスへと駆け上がっていく、バンドマンガの金字塔的なサクセスストーリーです。

「バンドマンガといえばこれ!」という不動の傑作です。
音が聞こえないはずのマンガから、コユキの歌声が響いてくるような錯覚を覚える描写力には圧倒されます。プロの世界の厳しさや大人の事情もリアルに描きつつ、最後は「最高の音」がすべてを解決する。バンドを組んだことがある人なら、胸が熱くならないはずがありません。主演水嶋ヒロさんで実写化された映画も大好き!
BLUE GIANT
石塚真一 / 全10巻(完結)
あらすじ
※こちらはジャズバンドをテーマにした作品。
仙台に住む高校生・宮本大は、ジャズに魅了され、毎日川原でサックスを吹き続けます。卒業後、世界一のジャズプレーヤーを目指して上京。ピアノの沢辺雪河、ドラムの玉田雅道とトリオ「JASS」を結成し、日本のジャズの聖地を目指します。圧倒的な情熱が、静かなジャズの世界を熱く塗り替えていく物語です。

サックスの音が「見える」んです。ページをめくるたびに、大の吹く音が魂に突き刺さってくるような衝撃があります。才能だけでなく、狂気的なまでの努力を積み重ねる大の姿には、読んでいるこちらも背筋が伸びます。バンドとしての衝突と調和、そして訪れるあまりにも劇的な結末。音楽の持つ力をこれほどまでに純粋に描いた作品は他にありません。
NANA
著者:矢沢あい / 既刊21巻(2026年1月現在)
あらすじ
同じ名を持つ二人の少女、大崎ナナと小松奈々。パンクバンドのボーカルとして成功を夢見るナナと、恋を追いかける奈々。対照的な二人が東京で出会い、共同生活を始めます。ナナが所属する「BLACK STONES」と、宿命のライバル「TRAPNEST」。音楽、恋、友情、そして残酷な運命が交錯する、華やかで切ない物語です。

ファッション、音楽、そしてヒリヒリするような心理描写。すべてがスタイリッシュで、それでいて心が壊れそうなほど繊細です。ナナの歌声に救われ、奈々の弱さに共感し……。バンドとしての成功の裏にある孤独や執着がリアルで、大人になって読むとさらに深く刺さります。現在休刊中ですが、今なお色褪せない伝説的な作品ですね。
ちなみに実写映画版も大好きです!
デトロイト・メタル・シティ
著者:若杉公徳 / 全10巻(完結)
あらすじ
オシャレな渋谷系ポップスを愛する心優しい青年・根岸崇一。しかし、彼はなぜか悪魔系デスメタルバンド「デトロイト・メタル・シティ(DMC)」のボーカル、ヨハネ・クラウザーII世としてカリスマ的な人気を博してしまいます。理想の音楽と、本当はやりたくない過激なメタルパフォーマンスのギャップに悶絶する爆笑コメディです。

「音楽性の違い」をこれほどまでに面白おかしく描いた作品はありません!根岸くんの不遇すぎる日常と、ステージ上でのクラウザーさんの神懸かった暴走の対比が完璧です。下ネタや過激な表現も多いですが、根底には音楽に対する深い愛情(?)があり、爆笑しながらも最後はなぜか感動してしまう不思議な力を持った作品です。
坂道のアポロン
著者:龍幸伸 / 既刊17巻(2026年1月現在)
あらすじ
1960年代後半、長崎県佐世保市。転校生の秀才・西見薫は、学校一の不良・川渕千太郎と出会い、ジャズの世界に引き込まれます。レコード店の地下室でのセッションを通じて、二人は友情を深め、恋を知り、青春を駆け抜けます。時代背景を織り交ぜながら、音楽で繋がる魂を描いた瑞々しい物語です。

セッションシーンの多幸感が素晴らしいです!ピアノとドラムが会話するように重なり合う描写に、読んでいるこちらまで踊り出したくなります。昭和のノスタルジックな空気感と、若者たちの剥き出しの感情。音楽が、言葉以上に気持ちを伝えてくれる瞬間が丁寧に描かれていて、読み終えた後は一本の名映画を観たような余韻に包まれます。
SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん
長田悠幸・町田一八 / 既刊22巻(2026年1月現在)
あらすじ
地味な高校教師・本田紫織は、27歳の誕生日に、伝説のギタリスト「ジミ・ヘンドリックス」の霊に憑りつかれてしまいます。「27歳までに伝説を残さなければ死ぬ」という契約を交わされた紫織は、寄せ集めの生徒たちと共にバンドを結成。時空を超えた才能が交差する、前代未聞の音楽バトルが開幕します。

設定は奇想天外ですが、中身は驚くほど正統派で熱い!ジミヘンの指先を借りてギターを鳴らすシーンの躍動感は、漫画表現の極致です。挫折を知る大人と、無限の可能性を持つ高校生たちが、音楽を通じて一つになっていく過程に胸が熱くなります。伝説のミュージシャンへのリスペクトも溢れていて、ロック好きなら必読の一冊です。
ソラニン
著者:浅野いにお / 全2巻(完結)
あらすじ
社会人2年目の芽衣子と、フリーターをしながらバンドを続ける種田。将来への不安を抱えながら、東京の片隅で同棲生活を送る二人。種田が所属するバンドが最後のチャンスを掴もうとした矢先、悲劇が彼らを襲います。残された芽衣子が、種田の遺した歌「ソラニン」をギターで奏でる、喪失と希望の物語。

モラトリアム期の「何者にもなれない焦燥感」が、痛いほどリアルに描かれています。芽衣子がステージで叫ぶように歌うシーンは、涙なしには読めません。大きな成功を掴む物語ではありませんが、等身大の若者たちが音楽を通じて一歩前へ進もうとする姿に、多くの読者が救われたはずです。浅野先生の叙情的な絵柄も最高にマッチしています。
ぼっち・ざ・ろっく!
著者:はまじあき / 既刊7巻(2026年1月現在)
あらすじ
極度の人見知りで友達がいない「ぼっちちゃん」こと後藤ひとり。ギターの腕前だけはプロ級の彼女が、ふとしたきっかけで伊地知虹夏率いる「結束バンド」に加入することに。ライブハウスでの活動を通じて、コミュ障な彼女が個性的な仲間と共に少しずつ成長していく姿を描く、ゆるくて熱いガールズバンドコメディです。

ギャグのキレが抜群で面白いのはもちろん、ライブシーンでの「覚醒」の瞬間がめちゃくちゃカッコいい!「ぼっち」という現代的な悩みを抱えた主人公が、音楽という唯一の武器で世界と繋がろうとする姿は、多くの人の共感を呼びました。下北沢のライブハウス文化への愛もたっぷりで、今の時代の「バンドの楽しさ」が詰まっています。
覆面系ノイズ
著者:福山リョウコ / 全18巻(完結)
あらすじ
歌うことが大好きな少女・ニノは、幼い頃に離れ離れになった二人の少年への想いを胸に、高校で軽音部に入部します。彼らに自分の歌声を届けるため、正体を隠した覆面バンド「in NO hurry to shout;(イノハリ)」として活動を開始。片想いと音楽が交錯し、叫び出すような感情がメロディに乗って爆発する、片恋メロディックストーリー。

「声」をテーマにした感情の爆発力がすごいです。ニノの歌が空気を震わせ、周囲を圧倒する描写には、ページをめくる手が止まらなくなります。メンバー全員が誰かを想い、その想いを音に変換して届ける。切なすぎる四角関係(それ以上?)と、疾走感あふれるライブシーンのバランスが絶妙で、常に感情が高ぶった状態で読み進めてしまいます。
けいおん!
著者:かきふらい / 全4巻(完結)
あらすじ
廃部寸前の軽音部に入部した、楽器初心者の平沢唯。ギター担当になった彼女と、ベースの秋山澪、ドラムの田井中律、キーボードの琴吹紬。ティータイムや雑談を楽しみながらも、学園祭や合宿を通じて「放課後ティータイム」という絆を深めていく。日常の幸せと、ゆるやかな音楽の時間を描いたガールズバンドものの火付け役。

この作品をきっかけに楽器を始めた人も多いはず。本格的な音楽マンガとは一味違う、「仲間と放課後を過ごす楽しさ」の延長線上に音楽がある、という雰囲気がとても心地よいです。でも、卒業が近づくにつれて感じる「この時間がずっと続いてほしい」という切なさは、どんな熱血マンガよりも青春を感じさせてくれます。
少年よギターを抱け
著者:信濃川日出雄 / 全4巻(完結)
あらすじ
天才的なギターの才能を持ちながら、音楽を諦めかけていた少年・真琴。そんな彼が、かつて伝説のバンドにいたという風変わりな少女・チカと出会うことで、再びギターを握ります。同世代のライバルたちとの出会いや、圧倒的な「個」の力がぶつかり合うバンド結成。音楽にすべてを懸ける少年たちの、瑞々しくも鋭利な青春物語です。

「音」の表現が非常にユニークで、視覚的な快感がすごいです。才能があるゆえの孤独や、他人と音を合わせることの難しさ、そしてそれが噛み合った瞬間の爆発。信濃川先生の繊細な線画が、音楽の持つ美しさと残酷さを際立たせています。短い巻数の中に、バンドの初期衝動がギュッと凝縮されている名作です。
宇宙を駆けるよだか
著者:川端志季 / 全3巻(完結)
あらすじ
容姿端麗で人気者のあゆみと、クラスで浮いている海根。ある日、二人の体が入れ替わってしまいます。絶望するあゆみを救ったのは、彼女が密かに憧れていた、学校でバンドをやっている火賀という少年でした。外見と内面、そして音楽を通じて繋がる心。自分自身の価値を見出していく、衝撃の入れ替わりストーリー。

「バンド」はメインテーマではありませんが、火賀くんがベースを弾きながらあゆみを勇気づけるシーンが、物語の中で非常に重要な役割を果たしています。音楽が、言葉以上に「その人の本質」を伝える手段として描かれており、読み終えた後は火賀くんというキャラクターと、彼の奏でる音に惚れてしまうこと間違いなしです。
いつもポケットにショパン
著者:くらもちふさこ / 全5巻(完結)
あらすじ
※バンドではなくピアノデュオ・アンサンブルを軸にした物語です。
幼馴染の麻子ときしん。共にピアニストを目指す二人でしたが、留学したきしんが豹変して帰国します。反発し合いながらも、二人の音は互いを求め合い、やがてピアノを通じて共鳴していきます。コンクールや学園生活の中で、音楽を介して結ばれる深い絆を描いた、少女漫画史に残る傑作です。

クラシック音楽を題材にしていますが、その熱量はロックバンドに通じるものがあります。くらもち先生の表現力が凄まじく、二人のピアノが合わさる瞬間の空気の振動が、紙面から伝わってくるようです。才能への嫉妬や、それを超えた愛。音楽を志す者たちの孤独と救いが、これ以上ないほど美しく描き出されています。
ふつうの軽音部
著者:クワハリ・出内テツオ / 既刊4巻(2026年1月現在)
あらすじ
ちょっとした憧れから、高校で軽音部に入部した主人公・鳩野ちひろ。彼女が組むことになったのは、個性的と言えば聞こえはいいが、どこか噛み合わない「ふつう」の部員たちでした。華やかなスターダムを目指すわけではない、どこにでもある公立高校の軽音部で、楽器の練習や人間関係、淡い恋に悩みながら、自分たちの「音」を探していくリアルな青春群像劇です。

「そうそう、軽音部ってこういう感じ!」というリアルな空気感がたまりません。超天才が出てくるわけではないからこそ、初心者が初めてコードを弾けた時の喜びや、バンド内の微妙な空気の読み合いが、読んでいて身につまされるほど共感できます。SNSでのバズりや現代的な悩みも織り交ぜつつ、最後には「やっぱり音楽っていいな」と思わせてくれる、今一番注目したい軽音部マンガです。
カノジョは嘘を愛しすぎてる
著者:青木琴美 / 全22巻(完結)
あらすじ
若くして天才サウンドクリエイターとしての地位を築いた「CRUDE PLAY」の元メンバー・秋。音楽ビジネスの世界に疲れ切っていた彼は、自分の正体を知らない女子高生・理子に、衝動的に「一目惚れした」と嘘をつきます。しかし、理子もまた圧倒的な歌声を持つ才能の原石でした。音楽と嘘が複雑に絡み合い、ビジネスと純愛が衝突する、ドラマチックなラブストーリーです。

音楽業界の裏側、プロデュースの残酷さ、そして才能という名の「怪物」に翻弄される人々の姿が、非常に濃密に描かれています。秋が書く楽曲が、理子の歌声によって命を吹き込まれる瞬間の描写は、恋愛マンガとしての甘さを超えた芸術的な迫力があります。切ない嘘を抱えた二人の恋の行方はもちろん、プロのバンドマンたちの矜持がぶつかり合うシーンも必見です。
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